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岐阜地方裁判所 平成7年(わ)100号 判決 1995年6月07日

本籍

岐阜県郡上郡八幡町大手町八一〇番地

住居

岐阜県各務原市尾崎北町三丁目一二三番地の六

会社役員

大坪治彦

昭和三三年三月二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官桑原和敏出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、岐阜市琴塚三丁目一〇番一号において、「カーフレンドオオツボ」の名称で自動車販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て

第一  平成三年分の総所得金額が五三八〇万九一九〇円で、これに対する所得税額が二一八六万六五〇〇円であるにもかかわらず、殊更過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成してその所得の一部を秘匿したうえ、平成四年三月一三日、岐阜市加納清水町四丁目二二番地の二所在の所轄岐阜南税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が四二五万七八九五円で、これに対する所得税額が一九万八一〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の所得税二一六六万八四〇〇円を免れた

第二  平成四年分の総所得金額が六四二六万四七三七円で、これに対する所得税額が二七二五万七五〇〇円であるにもかかわらず、殊更過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成してその所得の一部を秘匿したうえ、平成五年三月一一日、前記岐阜南税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が五四二万八〇五四円で、これに対する所得税額が二九万〇六〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の所得税二六九六万六九〇〇円を免れた

第三  平成五年分の総所得金額が三九六三万四四七五円で、これに対する所得税額が一四八八万八〇〇〇円であるにもかかわらず、殊更過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成してその所得の一部を秘匿したうえ、平成六年三月一五日、前記岐阜南税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が六三五万一六〇三円で、これに対する所得税額が一三万九〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により同年分の所得税一四七四万九〇〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一三通

一  検察事務官作成の捜査報告書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成三年分)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成三年分五枚綴りのもの)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成四年分)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成四年分五枚綴りのもの)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(平成五年分)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成五年分六枚綴りのもの)

(法令適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項(一二〇条一項三号)に該当するところ、判示各罪について所定の懲役と罰金とを併科し、以上は刑法(但し、平成七年法律第九一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法。以下同じ。)四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、ほ脱額が合計六三〇〇万円余、ほ脱率が約九九パーセントもの高額、高率にのぼるものであるうえ、被告人は、同業者も脱税をしているからなどという安易な考えから、経理を担当している妻に指示し内容虚偽の帳簿類を作成して犯行に及んでおり、さらに犯行後発覚を免れようと証拠書類を隠滅しているなど、本件の犯情はよくなく、被告人の刑責は重い。

しかし、他方、被告人が本件を真撃に反省し、本税、重加算税等一億円余を納付するとともに、事業を会社組織に改め税理士も替えて、今後適正な経理を行う態勢を整えていること、取引先の信用を失い経営が悪化するなどの社会的制裁も受けていること、被告人に前科がないこと、その他家族の状況等、被告人のために斟酌すべき事情もあるので、これら諸般の情状を総合勘案して、主文の刑を量定した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡部信也)

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